剣道の社会文化的価値について
吉村 哲夫(ヨシムラ・テツオ)
東海大学 助教授(体育学部武道学科)
1958年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。東海大学大学院修士課程体育学研究科修了。
日本武道学会評議員。剣道専門分科会会員。剣道教士8段。
研究分野:剣道史・スポーツ史・スポーツ教育
現在の研究テーマ:剣道の社会文化的価値について
■研究概要
「剣道の社会文化的価値」-剣道の国際的発展と剣道教育-
現在では、40数カ国に及ぶ世界の国々に剣道が普及しています。また、近年は武士をテーマにした映画の影響によるものか、ヨーロッパ諸国でも剣道人口の増加傾向にあることが報告されています。さらに、新たに中国での剣道活動も活発になってきたようです。これまでに培われた日本の正しい剣道の普及発展が望まれるところです。
しかし、今後はこれまでのように日本人による剣道の紹介や普及活動はもはや必要がなくなったと感じている外国人剣士も少なくありません。当初は東洋文化へのあこがれとして剣道に興味関心を持ち指導を受け入れてきた人たちも、最近は剣道に対する相当の研鑽を積み、日本剣道の現状に対する客観的な分析力を身につけた外国人剣士もかなり認められるようになりました。指導者として活躍する外国人剣士の増加につれて、各国独自の剣道文化の芽生えの時期にあると思われます。日本は諸外国に対してどのように主導的立場を堅持していくのか、あるいは、今後剣道が各国スポーツ界のなかでどのような変容を遂げるのか興味深い研究課題であるといえましょう。
また、我が国では特に明治期以降、学校教育の分野を中心に「剣道教育」が盛んに行われてきました。換言すれば、剣道は人格を陶冶する有効な教育的手段として社会的認知を受けてきたともいえるでしょう。少子化や価値観の多様化する現代社会の中で、今後剣道はどのような社会文化的価値を認められるのでしょうか。優勝劣敗主義を柱に発展してきた近代スポーツの現状は周知の通りです。剣道の持つ競技性をどのような形で学校教育に取り入れていくべきか真剣な論議と早急な対策を講ずる時期にあると感じています。大学教育に従事する人間の一人として、「剣道教育」を課題とする研究への取り組みを計りたいと思っています。現在は、学生剣道における「試合」の意義について考察しています。
■最近の主な著書・論文
1.「剣道の技術指導に関する研究」東海大学紀要第33号
2.「学生剣道における試合の意義に関する研究」日本武道学会第37回大会
3.「剣道の歴史」(財)全日本剣道連盟 分担執筆
4.「丹田意識とパフォーマンスの向上」東海大学紀要 第30号
5.「剣道の教育的価値についての一考察」東海大学紀要 第26号
■その他
・大学では「剣道史」・「スポーツ史」・「スポーツ文化論」などを担当しています。
・全日本剣道連盟選抜特別訓練講習会(第一期)の講師を務めています。
・年に数回、欧米やアジア諸国での剣道を通じた国際交流および調査を行っています。